新聞連載コラム「商いは芸」
新聞連載コラム「商いは芸」2005年2月15日号
やけのやんぱち日焼けのなすび。色が黒くて食いつきたいが、わたしゃ入れ歯で歯が立たない。
これはおなじみ寅さんの口上だが、最近職人さんの実演販売をよく見かける。
左手に丸めたあんこを持ち、右手で厚手の板のようなもので、和菓子の花びらを型どっていく。あっという間に、さまざまなかたちの和菓子が、出来あがる。ついつい見とれているうちに4個ほど買っていた。
家に帰るとカミさんがあらめずらしい!と喜んでまたたく間に食べてしまった。たしかに食べるために買ったのだが、もう少し眺めてからにすればよいのにと思った。
人なつこい顔で笑わせながら手で丸めたあんこを花びらにするようすを見ているうちに愛着のようなものが湧いたらしい。
寅さんの見事な口上と器用に花びらの菓子が産み出されていくイリュージョン(幻術)を観劇したわれわれは「ブラボー!」と賞賛し思わず財布を開く。
人は、そこにある商いの芸で感情消費に走ってしまうわけだ。
