新聞連載コラム「商いは芸」
新聞連載コラム「商いは芸」2005年6月21日号
ある女性書家が、夫の連れてきたホームレスの友人の書いた文字に深い衝撃を受けた。
なんとも味わいのあるその文字は、楷書体の美しくまとまった世界から一転して、独自の世界の書を誕生させた。
たたみ一畳程の大きな半紙に、はみ出さんばかりに書かれた 〝 躍動 〟 という2文字。
なんとも楽しげだ。
へたうま、へたへた、うまうま、うまへた。
これは最近の、若者による絵についての評価基準だそうだ。
一本の線で描かれた動物や、人の顔が、まるで子供のいたずら書きのようにへたなようで実はうまい。
この評価は、おもしろいことに、うまいよりもへたが上に来ることだ。
一番最後にくるのは、うまいようでへた。
何やらシロウトの書いた静物画を思い出してしまうが、一番だめらしい。
なかなか奥の深い評価だ。
どこか江戸の風流に通じる趣を感じる。
商いでいうならば、全面に商売の空気を出さずに遊び心を、取り入れる・・。
そういえば近所のおもしろ話の好きな鍼灸院の先生のところでは、遊んでいるような治療しているようなつかみどころがないが、不思議と患者が絶えない。
あれは商売のへたうまか・・。
