新聞連載コラム「商いは芸」
新聞連載コラム「商いは芸」2006年5月16日号
瓦屋根の下、創業77年と書かれた屋号。
人間でいえば喜寿のお祝いだ。
商店街の一角にある"乾物屋"。
具合が悪くなったおじさんに代わっておばさんがひとりで切り盛りしている。
まわりの店は入れ替わりが激しいが、そこだけはでんと変わらぬままだ。
下校の小学生に「おかえり」「今日もしっかり勉強してきたかい?」と、乾物屋のおばさんは威勢よく声をかける。
一方通行を無視して入ってきた車を、とおせんぼうをして追っぱらう。
車にはねられそうなちっちゃいおばさんだが、威勢のよさは人一倍だ。
しかし、おばさんはあまりにニコニコはしない。
むっつりした顔で「ありがとう」って言う。
たくさん買おうと関係なくむっつりだ。
あるとき、電車でキレイな着物姿のおばさんに出くわした。
どうやらお芝居の帰りのようだ。
感慨深そうに話をしている。
どこぞの上品そうな奥様というカンジだ。
腰をかがめながら、店番をしているいつもの姿からは程遠く、ビックリした。
シンデレラやプリティー・ウーマンのようにおばさんも変身するのだと思って、はたと気が付いた。
着物姿の奥様が、威勢のよい乾物屋のおばさんに変身していたのか。
喜寿のお店はおばさんの変身でがんばっているようだ・・。
